研究概要 |
1.広島湾海水中のOHラジカルの存在状態に関する研究 海水中の溶存有機物の光分解過程で、酸化剤として最も重要な役割を果たすと考えられるOHラジカルの存在状態を研究した。2007年春季および夏季に、広島大学生物生産学部の豊潮丸に乗船し、広島湾海水を採取してOHラジカルなどの活性酸素種の分析を行った。溶存有機炭素や亜硝酸などの化学成分も分析し、CTDデータなども併せて、OHラジカルの発生・消失過程を解析した。その結果、OHラジカルの発生速度、消失速度定数、定常状態濃度、寿命は、それぞれ56-146 nMhr^<-1>、260-400 x10^4 s^<-1>、 3-9.7 x 10^<-18>M、 0.23-0.38μsであった。これらの値は、米国の研究者が別の分析法で測定した値とほぼ同レベルであった。次にOHラジカルの発生源を調べたところ、亜硝酸、過酸化水素、硝酸などの光分解による寄与は、9-75%であり、残りの25-91%は未同定の物質(おそらく腐植物質などの溶存有機物)から発生することが明らかとなった。特に広島湾奥部の太田川河口域では、未同定の物質からの寄与が大半を占めることから、河川から供給される物質がラジカル発生過程に深く関与することが示唆された。(現在論文作成中)2.海水中過酸化水素および一酸化窒素の新規分析法の開発 海水中の過酸化水素の新規分析法を開発した。開発したのはフェントン反応を利用したHPLC分離一蛍光分析法であり、検出感度は数nMと高感度で船上での分析が可能である。従来の分析法と比較したところ、分析値がほぼ1対1に対応した。論文を作成し,現在投稿中である。次に、海水中一酸化窒素に関して、これを誘導体化した後、濃縮分離し、HPLC-FD法により測定する装置の開発を前年度に引き続き行った。本年度は、高感度測定が可能なように諸条件を設定し、海水への分析応用性を確認した。
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