研究概要 |
1)BC起源推定方法の検証:堆積物に共存する,地質性グラファイト(GBC)と燃焼由来のBC(soot-BC),2種類の不活性炭素種(inert-C)の識別について,初年度に採取したチャクチ海の表層堆積物を用いて検討した。堆積物中の砕屑性粒子(>63μm画分)を(1)HCIおよび(2)HF可溶成分除去,(3)トリフルオロ酢酸による加水分解,(4)CTO375_<24hrs>法による有機物の加熱酸化除去を行い、各処理におけるCN濃度と安定炭素同位体比(δ^<13>C)を測定した。従来法((1)+(4))と,(1)+(2)+(4)および(1)+(2)+(3)+(4)の処理をした場合の測定結果を比較すると,(3)を組み込んだ場合でもっともC/N比が高かった。inert-Cは高いC/N比をもつことから,加水分解によって含N高分子成分が除去され,BC精製度があがったと解釈された。また砕屑性粒子画分には燃焼生成粒子(=2次粒子)は含まれないので,上記前処理を適用して測定したinert-Cのδ<-13>CはGBCのエンドメンバーを示すものと解釈された。 2)環境試料の分析.:沖縄辺戸岬で採取したエアロゾル中BC, OCの濃度と放射性炭素(^<14>C)を測定した。OC,BCへの現代炭素の寄与(pMC)はそれぞれ56〜90,34〜68%であった。このうち,大陸からの風送ダストの影響化にある試料のpMCはOCで56〜60,BCで34〜37%で,大陸から輸送されるinert-Cのかなりの部分をバイオマス燃焼起源inert-Cが占める事が明らかとなった(この成果は論文にまとめてNuclear Instruments and Methods in Physics Research Section B:Beam Interactions with Materials and Atoms誌に投稿中)。またこの結果は,前年度の済州島でのバイオマス燃焼指標成分およびPAHsの分子組成の解析結果とも調和的である。
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