研究概要 |
本年度は,昨年の社会調査ならびに生態調査の追加調査を踏まえて分析中心の研究を行なった. 1、社会調査;昨年度の末丸町と地元高校生の社会調査を踏まえ,上下流の住民の意識差を明らかにするため,鴨川上流域の雲が畑・大原地区を追加調査した.また,生活者の季節による水辺印象変化を捉えるため,春と夏の追加社会調査を行なった. 2、生態調査;社会調査の結果,住民の季節変化に大きな影響を与える魚類より関心の強い鳥に着目することにした.鴨川の特異性を表す多数の堰堤によって仕切られた構造と水鳥の生息場利用の関係を分析した結果,サギ類では各堰堤区間に一様に分布すること,鴨類では止水的な水面の広さが生息密度と相関があった.またツバメの営巣場所は水辺に近い商店街に多いが,餌として必ずしも水生動物に依存する訳ではなく,むしろ水辺に多い陸生動物を利用していることがわかった. 3、従来ほとんど注目されなかった印象による3階層水辺環境評価法を確立した.その方法は水辺GES(ジオ・エコ・ソシオ)環境調査項目と9の印象項目の関連をクラメールの関連係数で繋ぎ,印象構成項目のプロフィールを提示し,この印象構成項目を用いて因子分析を行ない,共通因子を解釈する評価法である. 4、特に3で,生活者の水辺印象項目に水鳥(サギやカモなど)やツバメがどの程度寄与しているかを明らかにした.この結果、水辺空間に鳥類の生活圏を組み込むことが必要で、従来型の河道等に即した狭い水辺空間ではなく、水辺空間が,生態から見た鳥類の生活空間を包含し,これらの空間を保全する水辺から見た町づくりの必要性を主張する根拠を構築した.
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