研究概要 |
平成18年度は,わが国の地域経済が内包する経済面と環境面の課題を把握するために「(1)地域活力から見た地域経済の課題分析」と「(2)環境負荷低減に向けた地域経済の課題分析」の2つの分析を行った。 (1)地域活力から見た地域経済の課題分析 ここでは、全国9地域別の産業連関モデルを構築し,消費,投資,移出,輸出などの最終需要構造をふまえた地域経済の成長特性を検討した。具体的には,最終需要構造の変化が地域経済に及ぼす影響を,産業連関モデルで計算される生産誘発額,雇用誘発数,粗付加価値誘発額等の指標を用いて定量的に分析するとともに,これらの指標の変動を消費,投資,移出,輸出の各要因に分解し,生産,雇用,粗付加価値の各側面から見た地域経済の現状、並びに地域再生に向けた課題を考察した。 (2)環境負荷低減に向けた地域経済の課題分析 ここで取り扱う研究課題のうち,二酸化炭素排出構造については,これまでの研究を通じて,地域産業連関モデルの構築と実証分析をほぼ終えている。そこで,本研究では,地球温暖化と並ぶ重要な環境問題である廃棄物問題に重点をおき,廃棄物分析用の地域産業連関モデルを適用し,二酸化炭素排出構造分析と合わせて,国内地域レベルでの環境負荷低減に向けた地域課題の分析を行った。なお,わが国の廃棄物は,一般廃棄物と産業廃棄物に大別されるが,地域経済との関係では,産業活動との関連が深く,排出量が大きい産業廃棄物の排出構造をより詳細に分析することとした。また、環境省が公表している産業部門別・産業廃棄物種類別の排出量推計値を利用して,地域産業連関モデルで使用する排出係数の細分化を行い,廃棄物排出構造の詳細な分析が可能な産業連関モデルを構築した。 以上の分析を通じて,地域経済の変動と環境負荷の発生との関連を明らかにするとともに,環境負荷の小さい地域経済システムの構築に向けた課題を考察した。
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