研究概要 |
地球温暖化や廃棄物問題に代表される最近の環境問題は,生産活動や消費活動に伴って不可避的に発生するものであり環境負荷の小さい循環型社会を形成していくためには,経済循環構造と環境負荷の発生との関連を的確に捉えておくことが必要である。本研究では,研究代表者らが実施してきた地域産業連関モデルに基づく二酸化炭素排出や産業廃棄物排出に関する地域構造分析の成果をふまえて,地域経済の循環構造と二酸化炭素排出量との関係を国内地域を対象として総合的に把握できる政策分析システムの開発を行った。また,シミュレーション分析を通じて,環境対策が地域経済の活力と環境負荷の低減に及ぼす影響を定量的に分析した。 平成20年度は,地域間産業連関モデルによるCO_2排出分析モデルを構築し,政策シミュレーション分析に適用するとともに,包絡分析法(DEA)を用いて生産活動効率化に基づくCO_2排出量削減の可能性を検討した。まず,CO_2排出削減策として最終需要面における対策を想定し,「1990年比6%削減」を目標とする政策シナリオを作成し,シミュレーション分析を行った。その結果,削減効率の良い部門に対する最終需要を削減するシナリオにおいて,大きなCO_2排出削減効果が見込まれることが示され,CO_2排出削減に伴う各地域の生産額への影響も明らかにすることができた。次に,包絡分析法の適用では,生産活動の効率化によるシナリオとしてCO_2直接排出量が大きい上位20部門を対象として分析を行った結果,2000年水準からは約500万(t-C)のCO_2排出量削減が見込まれ,1.6%削減されることが明らかになった。さらに,環境効率についても1995年,2000年と比較して良い水準となることが示された。さらに,これらの分析結果に基づいて,今後の地域レベルでの環境政策の方向性を環境効率性と経済活力の調和の観点から考察した。
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