研究概要 |
本年度も気候変動枠組条約締約国会議や補助機関会合に出席・傍聴して,交渉を把握し,随時研究会を開催し,プロジェクトや市場に関わる関係者からの聞き取りを行った。 今年度は,これまでの事前事後型のベースライン方式の比較について,理論と実勢の両面からの分析結果を総合し,現実には事後方式が主流であるものの,ともなう欠陥がありえて,かつ,現実のベースライン方法において,いくつもの対策が施されているにもかかわらず,寡占等の産業の競争モードや,限界費用の値によっては,この弊害が実現しうることを確認した。これらの比較点は,現在議論されている新メカニズムについての,各国の利害や移行の問題にも重要な示唆を含む。 さらに,これまでよりも分析の視角を広げて,中長期的な投資,技術,政策要因に対する影響を評価する動学分析の枠組みを設定して,プロジェクトベースメカニズムの産業内,もしくは国内外への経済活動相互間の影響をとらえる試みを開始した。CDM等の現行メカニズムに即していえば,国連等でのチェックにもかかわらず,既存のメカニズムが,潜在的な新規メカニズムに対して,マイナスの要因となりうる可能性が十分存在しうることを示した。 これらの研究成果は,さまざまな機会に,誌上あるいは口頭で発表した。本年度は最終年度なので,CDMのこれまでの実績や問題点を整理し,これまでの本研究の成果を既存文献の中で位置づける報告書を作成した。 分析方法の基礎となる理論ツールの開発に関しては,地球温暖化阻止のための国際協力機構などグローバルな公共財の供給問題を考察し,各国の自発的な参加を通していかに公共財供給が実現可能かをゲーム理論の視点から分析した。具体的には,公共財供給のための国際組織への自発的参加を伴う公共財ゲームを分析し,ゲームの均衡によって制度構築が可能であることを証明した。さらに,理論結果を実験研究によって検証した。
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