研究概要 |
インドネシア,ビリビリダムによる建設で移転した住民等13世帯に対する詳細なヒアリング調査を,ダム近傍のゴワ県とインドネシア政府の移転政策(トランスミグラシ)によって開発されたマムジュ県の2ヶ所で2009年8月に実施した。調査対象世帯にはダム建設以外の理由で移住した住民も含まれる。ゴワ県へ移転した人々は,ほとんどがビリビリでの生活に比べて,収入もしくは資産が増加したと回答している。要因としては,移転後に新たな職を得られたことや,公共交通や電気といったインフラ設備が移転前に比べ向上したことで支出が減少したことがあげられる。マムジュ県に移転した住民の生活再建の成否を分けた要因として大きかったのは,移転者の教育レベルであった。小学校を卒業していない住民は,コミュニティへの参加や新たな事業に取り組むための学習について困難があった。成功した人々は最低でも小学校を卒業しており,大半は中学,中には高校を卒業している。そういった人々は,移転した後の数年間のインフラが未整備だった厳しい時期に,自分で新たな農作物栽培方法を学んでいたり,レンガ作りや家具販売などの商業を自ら始めたり,タバコや木材の行商を営んでいた。彼ら自身の努力と意志による影響も大きかったが,「新しいことを始める」大きな足がかりとして,基礎教育の存在が重要であった。 トルコ,アタチュルクダムによって移転した250世帯に対して2009年11月から12月及び2010年3月に,現地調査及びアンケート調査を実施した。移転住民の生活再建状況は,移転補償金の使い道によって左右されていた。補償金の大半を土地購入にあてた世帯は,移転前よりも生活が改善していたが,土地購入以外に補償金を使った世帯での再建状況は良くなかった。また,移転地の地価上昇率も,その後の生活状況に影響を及ぼしていた。
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