研究概要 |
2003年1月に施行された「自然再生推進法」では、自然再生事業を自然環境の保全、再生を目的とする地域主導の新たな形の事業と位置づけており、釧路湿原自然再生プロジェクトをはじめとする事業が全国各地で実施されるようになった。だが、実際には自然環境をめぐる開発と自然保護の対立が深刻化している中で、利害関係者の様々な要求を調整することは困難である。合意形成を図るためには、自然再生事業に対する様々な人々の意見を評価し、それを事業計画にいかに反映させていくかが重要な課題となっている。 本研究の目的は、環境経済学の観点から自然再生事業に対する様々な人々の要求を数量的に評価する手法を開発し、現実の自然再生事業に対して適用することで、自然再生事業における合意形成の今後のあり方を示すことにある。具体的には、環境経済学の分野で開発の進められている「トラベルコスト法」と「コンジョイント分析」と呼ばれる環境評価手法を応用し、自然再生事業の経済効果を代替案別に評価する手法を開発する。さらに、本研究の評価手法を釧路湿原に対して適用し、事業を実施したときに生じる地域経済への影響や環境保全効果を計測することで、自然再生事業における合意形成のあり方について提言を行う。2006年度は,釧路湿原を中心とする周辺地域のレクリエーション利用の実態を調査した。また,評価手法の開発を行うとともに,経済実験の実験計画について検討した。研究成果の一部は,第三回環境経済学世界大会にて報告した。
|