研究課題/領域番号 |
18310041
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
横谷 明徳 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 先端基礎研究センター, 研究主幹 (10354987)
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研究分担者 |
藤井 健太郎 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 先端基礎研究センター, 研究職 (00360404)
渡邊 立子 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力基礎工学研究部門, 研究副主幹 (10360439)
赤松 憲 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力基礎工学研究部門, 研究職 (70360401)
鹿園 直哉 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 先端基礎研究センター, 研究副主幹 (10354961)
漆原 あゆみ 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 先端基礎研究センター, 博士研究員 (80391275)
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キーワード | 放射線生物影響 / DNA損傷 / クラスターDNA損傷 / LET / EPR / ラジカル / 塩基除去修復 / 突然変異 |
研究概要 |
本年度は、以下のように(1)DNA損傷過程の物理化学的観測及び(2)DNA損傷の生化学的分析を行った。 (1)DNA損傷過程の物理化学的観測:シンクロトロン軟X線ビームライン(SPring-8、BL23SU)において、DNA薄膜に対する軟X線吸収スペクトル測定を行い、DNAを構成する元素のK吸収端近傍の微細構造(XANES)を明らかにした。このスペクトルを元に、同ビームラインに接続したEPR装置を用いて、DNA薄膜試料に対して軟X線照射しながら短寿命のラジカル測定を行った。その結果、DNAラジカルの収率は、DNA中の酸素のK吸収端構造を越えたエネルギーの軟X線が照射されると、それ以下のエネルギーを照射した場合に比べ約2倍増大することを突き止めた。一方、DNA鎖切断頻度も同様な傾向であったことから、DNA中の酸素の光電効果により生成する低速2次電子により短寿命のラジカルが過渡的に誘起され、これが鎖切断の前駆体であることが示唆された (2)DNA損傷の生化学的分析:プラスミドDNAに対するイオンビーム照射を行い、照射後試料に対して塩基除去修復酵素(グリコシレース)を反応させた時の修復反応測定により、塩基損傷とこれを含むクラスター損傷の収率の測定を実施した。本年度は、原子力研究開発機構高崎研究所のTIARA施設を利用し、照射イオン種としてHe(2+)、C(5+,6+)、Ne(8+)用い、イオンのエネルギーを変えることでLETのレンジを数keV/μm〜1000keV/μmまで変えて照射を行った。その結果、LETが増大するに従い、急速にグリコシレースの活性が低下することが明らかになった。これはLETが高くなると損傷のクラスター化の度合いが増し、酵素がもはや除去処理できなくなることを示唆している。さらに、照射DNA試料に対してHPLC法と脱リン酸化酵素を用いて、鎖切断末端の構造を決める手法の開発すると同時に、合成クラスター損傷を大腸菌に導入し、突然変異誘発率の測定を行った。
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