研究概要 |
水道原水中に混入しうるエンドトキシン量およびその存在状態を調べるため,Escherichia coli, Microcystis aeruginosa, Synechococcus sp.の3株を対象として,細胞数とエンドトキシン量の関係を求めた。その結果,一細胞当たりのエンドトキシン量は,E.coli>Synechococcus sp.>M.aeruginosaであること,またSynechococcus sp.はM.aeruginosaと比較して約100倍高いエンドトキシン活性を示すことがわかった。これらの結果と微生物群の季節変動を併せて考慮すると,琵琶湖などの閉鎖水域においては夏季に繁殖するとされるSynechococcus sp.などのピコ植物プランクトンの寄与が高いと推定される。また,これらの微生物細胞を異なる塩素濃度で処理した場合,エンドトキシンの分画によりその挙動が異なること,すなわち結合エンドトキシンが塩素処理により容易に低減するのに対して,遊離エンドトキシンはむしろ増大することを示した。 冬季に実施した琵琶湖・淀川水系におけるエンドトキシン測定調査の結果から,下水処理放流水の混入によりエンドトキシン濃度が10倍程度高くなることを示した。なお,環境水中の全菌1細胞当たりのエンドトキシン量は,E.coliのそれの1/5程度と比較的高い値を示した。さらに,淀川から採取した環境水を対象として,水中有機物試料の分画と濃縮を行うための処理方法にっいて検討を行い,ヒト表皮角化細胞を用いて分画ごとの細胞毒性試験を行ったところ,エンドトキシンを含む高分子分画に強い細胞毒性が確認された。
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