研究概要 |
水道水中に存在する免疫毒性物質として微生物由来物質であるエンドトキシンと消毒剤に着目した。まず,エンドトキシン曝露による影響を評価するため,DNAマイクロアレイ解析試料の調製方法(エンドトキシン曝露条件の検討)と免疫応答変化の指標となりうる遺伝子の選定を行った。曝露条件として,曝露溶液中の増殖添加剤の有無,曝露時間および曝露濃度を変化させ,RT-PCR手法によりエンドトキシン認識に関わる遺伝子群の発現量を調べ,適切な曝露条件を決定した。その結果,曝露条件として以下の条件を選定した。 1) 添加剤の有無:あり,2)曝露時間:8時間,3)曝露濃度:1000および3000 ng/mL 上記条件にてエンドトキシンを曝露したケラチノサイトからRNAを調製し,ヒトホールゲノムタイプのDNAマイクロアレイ解析により,発現強度比が変化した遺伝子群を調べた結果,炎症反応メディエーターであるIL-8の発現量が約1.3倍に増加しており,以降ではIL-8の産生量を指標として免疫毒性評価を行うこととした。 また,消毒剤である次亜塩素酸がヒトケラチノサイトに及ぼす影響を明らかにするため,次亜塩素酸の曝露方法の検討を行った。次亜塩素酸は有機物と反応して速やかに消費されると考えられるため,PBS溶液により目標濃度まで希釈を行ったうえで,1回の曝露時間は15分以内に抑える必要がある。さらに,次亜塩素酸曝露による遺伝子応答変化を調べたところ,IL-8の発現強度増加は確認されなかった。そこで,エンドトキシン単独曝露,次亜塩素酸単独曝露,および両者の複合曝露時の培養液上清を用いて,ELISA法によりIL-8産生量を比較した。その結果,わずかではあるが複合曝露(次亜塩素酸10 mg/L,15分曝露の後にエンドトキシン3000 ng/mL,8〜24時間曝露)によりIL-8産生量が増大することが示された。
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