研究分担者 |
田辺 信介 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (60116952)
岩田 久人 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (10271652)
磯部 友彦 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, COE研究員 (50391066)
滝上 英孝 国立環境研究所, 循環型社会, 廃棄物研究センター・主任研究員 (00353540)
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研究概要 |
残留性の有機ハロゲン化合物であるポリ塩化ビフェニール類(PCBs)、ポリ臭素化ジフェニルエーテル類(PBDEs)、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCDs)の異性体分析法を確立し、野生高等動物の組織・臓器試料の測定に適用した。本年度はとくに北海沿岸で大量死したゼニガタアザラシにおける有機ハロゲン化合物の蓄積・代謝特性について検証した。大量死を起こしたゼニガタアザラシでは、脂肪の消耗に伴って、体内の有機ハロゲン化合物が、その蓄積部位である脂皮から肝臓などに再分配しており、薬物代謝酵素による代謝・活性化や毒性リスクの上昇が推察された。また、PBDEs・RBCDs異性体とダイオキシン類・PCBs異性体の濃度比や相関を解析した結果、PBDEsやHBCDsは主に肝臓中の薬物代謝酵素CYP2Bにより代謝されている可能性が示唆された。 また本研究では、PCBsの代謝産物である水酸化PCBs(OH-PCBs)の分析法を開発し、鯨類の脳におけるその残留と蓄積特性について検討した。分析した全ての脳試料からOH-PCBsが検出され、本研究により初めて鯨類の脳にOH-PCBsの存在することが明らかとなった。また、鯨類脳中のOH-PCBs/PCBs比は、他の野生生物やヒトの血中における報告値に比べ低値であり、脳へのOH-PCBsの移行性は低いこと、鯨類のPCBs代謝分解能が低いこと、などがその要因と考えられた。一方、OH-PCBsの異性体パターンは鯨種によって異なっており、PCBsの曝露状況や代謝能力、血中TTRとの結合能などに種間差のあることが示唆された。さらに、鯨類メスの胎児の脳からもOH-PCBsが検出され、その胎盤を通した移行が確認された。 in vitroの代謝試験法開発では、ミンククジラのCYP1A1の全長cDNAクローンを用いて、その蛋白質を酵母で発現させることに成功した。この酵母からミクロソームを調製し、ミンククジラCYP1A1依存的なPCB77の代謝実験をおこなったところ、2種類の水酸化PCB(4-OH-3,3',4',5-TCBおよび5-OH-3,3',4,4'-TCB)の生成を確認した。その生成量は4位水酸化体よりも5位水酸化体の方が多いことが明らかとなった。
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