研究概要 |
(1)多様な陸棲および海棲の野生高等動物を対象に、有機ハロゲン化合物(PCBs, PBDEs, HBCDs)および水酸化PCBs (OH- PCBs)を測定し、その蓄積や代謝特性等を解明した。その結果、野生高等動物のなかでもオオタカ、オオワシなどの猛禽類やハシブトガラス、タヌキ、ネコなどの陸棲動物において、臭素系難燃剤(PBDEs・HBCDs)による汚染レベルの高いことが明らかとなった。また、PCBsとOH-PCBsの蓄積プロファイルを解析した結果、親化合物であるPCBsに対するOH-PCBsの濃度比は生物種によって大きく異なっており、PCBsの代謝能に 大きな生物種間差のあることが推察された。とくにイヌやネコ、タヌキでは、血中の総OH-PCBs濃度がPCBs濃度を上回っており、その毒性影響評価に関して親化合物だけでなく代謝物であるOH-PCBsのリスクも併せて考慮する必要性のあることが示唆された。 (2)昨年度発現に成功したバイカルアザラシCYP1A1タンパク質を用いて、CYP1A発現の指標酵素であるMROD・ EROD・ PROD・ BRODの活性(Vmax・ Km)を測定した。その結果、バイカルアザラシCYP1A1によるEROD活性は他の活性より高く、ヒトCYP1A1の場合と類似していた。一方、測定した全ての酵素活性について、バイカルアザラシCYP1A1のVmax値はヒトCYP1A1の値より低く、ERODとBRODのKm値はヒトCYP1A1の値とは異なっていた。これらの結果から、バイカルアザラシCYP1A1はヒトCYP1A1とは異なる基質代謝能を保持していることが示唆された。 (3)残留性有機ハロゲン化合物およびその水酸化物を甲状腺ホルモン受容体(TR)レポーター遺伝子アッセイ(TRβ-CALUX)に供試し、各物質のアゴニスト作用やトリヨードサイロニン(T3)に対する阻害/増強作用を評価した。その結果、T3との共曝露試験(48時間後)においてTriclosanおよび3〜4塩素化の一部OH-PCBsに阻害作用があり、4,4'-diiodobiphenylおよびHexachlorobutadieneに増強作用のあることが判明した。
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