研究概要 |
本年度は,重金属暴露によって特異的に発現が変動する遺伝子のリアルタイムPCRによる確認および詳細な発現変動の確認を行った.その結果,マイクロアレイによって検討したカドミウム応答遺伝子群の中に従来カドミウム応答遺伝子として報告されていないものがあり,その中には重金属に対するマーカーとされてきたメタロチオネインより高感度にリアルタイムPCRで応答が検出されるものが存在した.また,経時的発現量の変動が遺伝子によって異なることを明らかにすることができた.一方,薬物代謝酵素CYP遺伝子の特定の分子種が重金属応答遺伝子の中に含まれていたことから,線虫のCYP遺伝子も重金属の防御等にかかわっていることが分かった.トキシコゲノミクスの観点から,線虫における毒性影響をヒトをはじめとした多くの生物の影響に外挿する必要があることから,線虫のCYP遺伝子とヒトのCYP遺伝子を発現レベルで比較することを優先することにした.ヒトCYP遺伝子の誘導作用が知られる各種試薬に線虫CYPの発現変動を調査した結果,線虫のCYPはヒトCYP1A誘導剤で35A,35B,35C遺伝子で発現の上昇,ヒトCYP2B誘導剤フェノバルビタールにおいてはCYP31,35の遺伝子群の発現上昇が観察された.このことは,線虫CYP遺伝子ファミリーもヒトCYPファミリー特異的誘導剤で特徴ある発現誘導を受けることを示すものである.ヒトへの外挿を行うためにはこれら遺伝子発現の変動のヒトCYP遺伝子との発現変動相同性マップが必要になることから,これら暴露条件における発現変動データを下にTorus self organizing mapを用いて線虫CYP遺伝子のマッピングを行った.今後,ヒトCYPとの関連性を明らかにすることで外挿を試みる予定である.
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