本研究は、カーボンナノチューブやサケ白子由来DNA等のようなナノ素材をポリウレタンポリマーやアルギン酸などのような有機高分子からなる網目構造を持つケージの内に閉じ込めることによって、環境のトータル修復および生体のピンポイント浄化に使える新規吸着材料の開発を目標にして、平成18年度からスタートした4ケ年計画の研究である。今年度は前年度の研究で得られたデータに基づき、吸着場であるカーボンナノチューブが有害化学物質を捕集・吸着機構について理論的に解析した。その結果、以下のようことが判った。 ・ カーボンナノチューブは、ベンゼンおよびベンゼン骨格を持つ化合物を選択的に捕集・吸着する。 ・ LUMO-HOMO相互作用の概念で、この特徴を説明することができる。 ・ 具体的に、対象物質(ベンゼンおよびベンゼン骨格を持つ化合物)のHOMOおよびカーボンナノチューブのLUMOが互いに共有し、対象物質のπ電子を収容する新しい共有軌道を形成する。即ち、カーボンナノチューブは「化学結合に相当する」機構で、ベンゼンおよびベンゼン骨格を持つ化合物を吸着する。 本研究は、カーボンナノチューブを含むナノ素材の安全性についても、検討した。ナノ素材の魅力を環境分野にも発揮させると同時に、その潜在的なリスクについても評価・確認する必要がある。特に、植物に対する評価実験は、ナノ素材の特徴を示唆するデータが得られている。
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