研究概要 |
本研究では,NADH特異的なPCB分解菌Pseudomonas sp.KKS102株由来ビフェニル化合物分解酵素系をNADPH依存的に改変し,光合成微生物に組み込むことによって,貧栄養環境下でもビフェニル化合物を効率的に分解できる新規光合成細菌株の創生を目的としている。 最終年度の今年度は,NADH特異的な酵素であるBphA4の175位と177位のアミノ酸残基にランダム変異導入を行い,96穴マイクロプレートを用いて効率的にNADPH依存的変異体発現株をスクリーニングする系を構築して,野生型の基質特異性を約3000倍逆転したNADPH依存的E175C/Q177G変異体を得ることに成功した。この変異体は,これまでに得られていたNADPH依存的E175Q/Q177K変異体よりも約5倍NADPH特異的であった。このスクリーニング系はランダム変異導入による変異体酵素の作製と解析に極めて有用である。 また,NADPH依存的ビフェニル化合物分解酵素系(BphA4,BphA3,BphA1A2)遺伝子をシアノバクテリア(ラン藻)に導入した。シアノバクテリア内でシアノバクテリアの光合成関連psbE遺伝子のプロモータ制御下にBphA4,BphA3,BphA1A2遺伝子を共発現するプラスミドを自律的複製可能なプラスミドpVZ321を用いて作製してシアノバクテリアSynechocystis sp.PCC6803株に導入し,菌体内での光依存的BphA遺伝子群の発現を確認した。さらに,BphA4遺伝子としてNADPH依存的なE175Q/Q177KおよびE175C/Q177G遺伝子を用いることにより,光照射下,糖類を含まない貧栄養条件で培養した菌体がビフェニルの酸化的分解活性を示すこと確認し,目的の新規光合成微生物を創出することができた。今後,PCBのみならず,貧栄養環境下での他の芳香族性環境汚染物質の生物的環境浄化への応用と展開が期待される。
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