研究概要 |
農薬等による土壌汚染サイトは一般に貧栄養状態の土壌である。このような現場においてバイオレメディエーションを行う場合、土壌へ投入した担子菌が効率よく増殖し、リグニン分解酵素群を効率よく分泌させる必要がある。このような必要性から多収穫米の玄米及び稲わらをC. versicolorへの栄養源とした新規な農産廃棄物固定化担子菌を開発した。担子菌の固定化方法として、多収穫米の稲わら、玄米、および稲わらと玄米の混合の3種類を用いて、それぞれのバイオマスをミキサーにて粉砕・微細化した後、オートクレーブ処理を行うことにより無菌状態の固定化担体を調製した。ここのC. versicolorを植菌し約1週間インキュベートすることにより固定化担子菌を調製した。玄米に固定化した菌体および稲わらに固定化した担子菌では、いずれも酵素の分泌や菌糸の生育の点で良好な結果は得られなかった。一方、稲わらと玄米の混合担体に固定化した場合、通常の培養では発現が認められなかったPODそしてMn peroxidase (MnP)活性が確認でき、それぞれ102μkat/mL, 282Unit/mLであった。特に、このMnPの分泌量は、現在までに報告されている他菌株での最大MnP分泌量より数倍高い発現量である。この成果をもとに、この固定化担子菌を用いたPCPを含むモデル汚染土壌の浄化を試みた。その結果、担体中の担子菌は良好に増殖するとともに効率よくLac,、POD、LiP、およびMnPを分泌し、処理21日目において培養初期に100ppm存在したPCPを検出限界以下まで分解できることを実証できた。本研究で開発した分子生物学的手法による土壌中の担子菌の増殖状況の把握技術の開発および農産廃棄物を固定化担体とした固定化担子菌の土壌汚染サイトへの活用は、ともに環境浄化ツールとして活用が期待される。
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