研究課題
永続的にサンゴ礁生態系を修復するためには、人の手を入れないで自立的に回転するシステムが必要である。本来、生物にはダメージを修復する能力が備わっており、サンゴにも様々な修復システムが機能している。サンゴの自己修復システム(自然治癒力)を強化することによってサンゴ礁生態系の基盤であるサンゴを再生・維持し、生物間の正の連鎖作用を用いて環境を修復する新しい技術を開発する。そのためには、サンゴのダメージと修復の生理学的研究と物理的環境要因のサンゴに与える影響等の科学的知見と新規理論を確立する必要がある。本研究課題では、青色光によるサンゴ修復システムの強化の有効性とメカニズムを検討し、大規模応用を視野にいれた新しいサンゴ礁回復技術の開発を目指している。本年度は、三年計画の二年目実施年度として、サンゴの生育に関する負の要因の特定と生物学的保護機能に関する研究をおこなった。主な研究成果は以下の通りである。(1)高温によるサンゴ白化原因の特定:サンゴが高温によって白化する原因は未だ特定されていない。本年度は、その原因を追及するために細胞生物学的実験をおこなった。その結果、サンゴの共生藻の一酸化窒素(NO)産生が温度上昇によって高まることを突き止めた。(2)無節サンゴモによる富栄養化環境の改善:サンゴ礁衰退原因の一つとして都市化にともなう海水の富栄養化が考えられている。無節サンゴモを用いて、海水の浄化実験をおこなった。その結果、無節サンゴモは海水中の窒素濃度を下げ、サンゴの生育をたすけることが明らかとなった。これらの結果は、英文国際誌に掲載あるいは投稿中である。本年度の研究結果は、サンゴ礁環境修復技術開発の基盤となるものであり、次年度の研究展開に生かすことができると考えている。
すべて 2008 2007
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件)
Plant and Cell Physiology (「掲載確定」)
Coral Reefs 27, 209-218 27
ページ: 209-218
Plant Cell Monographs 6
ページ: 267-280