研究概要 |
稚内層珪藻頁岩は、4〜20nmのメソ孔を多く有する天然の多孔質材料であり、その細孔構造に起因した自律的な調湿機能を有する材料として建材等に幅広く利用されている。本研究では、珪藻頁岩による環境負荷低減のための技術開発を目的に、潮解性物質担持による吸湿性能の向上および特定悪臭物質に対する空気浄化作用(吸着、脱着特性)について定量的に評価した。 潮解性物質である塩化リチウム(LiCl)、塩化カルシウム(CaCl_2)水溶液に珪藻頁岩を含浸、乾燥させることで、潮解性物質担持珪藻頁岩を調整した。担持量の増加とともに、吸湿量が増大し、例えば塩化リチウム120mg/g(含浸濃度20wt%)で最大吸湿量は900mg/g(RH95%)に到達した。しかし、吸湿量が増えると溶けた潮解性物質が細孔内から溶出してしまった。そこでスキャナーで求めたRGBの色調変化から溶出が起こらない担持量を定義し、塩化リチウムで19.3mg/g,塩化カルシウムで36.3mg/gが限界担持量であると決定した。このときの最大吸湿量はLiClで330mg/g、CaCl_2で320mg/gであった。さらに温度23℃、相対湿度(RH)75%→40℃、RH28%を6時間周期で行い、200回以上の繰り返しでも安定した吸放湿性能を得ることができた。 また、人間の生活環境で発生する様々な臭気成分の脱臭性能について、稚内層珪藻頁岩を用いて評価し、アンモニア、トリメチルアミンなどの塩基性ガス、イソ吉草酸などの有機酸、アセトアルデヒドなどで、備長炭よりも高い脱臭効果を示した。しかし、硫化水素、メチルメルカプタンなどの硫黄系は、備長炭の方が優位であった。さらに25℃、RH50%の条件で5.0gの珪藻頁岩粒子(1-2mm)を充填したカラムに1ppmのイソ吉草酸を導入し、50日以上に渡る持続的な高い脱臭効果を確認した。また25℃、RH10%の乾燥空気へ切り替えたとき、水蒸気が急激に脱離するが、臭気成分は薄い濃度で緩やかに脱離していることが解った。
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