研究概要 |
我々は,電気化学を用い液相中で1本の導電性高分子を長さ、密度、方向、形を電気パルス印加により制御しながら大面積に形成させる新しい技術"電気化学エピタキシャル重合"を開発した。この技術はモノマー(分子細線原料)を含んだ電解質溶液中において,ヨウ素原子で表面修飾した原子平坦金属電極にパルス電圧を印加することにより,基板の表面原子配列に沿ってモノマーの逐次的な電解重合を起こさせ単一分子細線を形成させる原理に基づいている。前年度に,二つの異なるモノマー分子,酸素に含むチオフェン(C80MT)と酸素を含まないチオフェン(C8MT)を用いて,多段的電気化学エピタキシャル重合をを行い,単一分子ヘテロ接合の形成に成功した。今年度は,ヨウ素-金(111)表面に形成させた異種分子細線の電子状態や表面運動について詳細に検討した。C80MT部分の細線はトンネル分光より,表面で金属状態を取ること,C8MT部分の細線は1eVのバンドギャップを持っ半導体であることが明らかになった。以上から形成したヘテロ接合細線は,金属と半導体の接合からなる分子細線であることが明らかになった。更にヘテロ結合部分の表面でのSTM像の経時変化を追うと,C80MT部分は表面に強固に吸着しているのに対し,C8MT部分は弱い吸着により,表面で首ふり運動をすることが分かった。C8MTの表面運動に関わらず,2種類の細線の接合点は切れることなく安定に存在することが確かめられた。以上より2種類の分子細線接合の電子的,及び表面運動を明らかにすることが可能になった。
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