金ナノロッドの表面状態制御を行った。リン脂質(phosphatidylcholine)およびポリエチレングリコールによる表面修飾を行い、いずれも安定で細胞毒性の低い金ナノロッド分散溶液を得ることができた。これらの金ナノロッド分散溶液を用いた細胞の光破壊や遺伝子導入、さらにマウスを用いた体内動態についても明らかにした。 リン脂質修飾金ナノロッドは正のゼータ電位を示し、アニオン性高分子で表面修飾した基板表面に静電的に吸着することを明らかにできた。金ナノロッド吸着ガラス基板の走査型電子顕微鏡像から金ナノロッドは長軸がつながった凝集構造をとることがわかった。さらに、この特異な2次元凝集構造はアミノヘキサンチオールを共存させることにより、ランダムな構造に変化することがわかった。これらの凝集状態変化はガラス基板の吸収スペクトルにも明確に反映されており、金ナノロッドの特異な凝集構造が分光計測で検出できるほど均一かつ広範囲に分布していることを明らかにした。 一方で、リン脂質修飾金ナノロッドの作製条件の最適化を行った。金ナノロッドを凝集させることなくリン脂質による表面修飾、さらにガラス基板への固定化を実現できる条件を検索した。一連の実験から、金ナノロッドの分散安定性はカチオン性界面活性剤の残存量に依存しており、phosphatidylcholine単独では分散性を維持できないことが明らかになった。さらに、基板表面への金ナノロッドの吸着は溶液中のカチオン活性剤によって阻害されることも確認できた。ガラス基板上の金ナノロッド2次元凝集体の構造制御を実現するには、カチオン性界面活性剤による分散安定性の確保と基板への吸着阻害という相反する要素の最適化が重要であることがわかった。
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