研究概要 |
今年度は分子性伝導体におけるWigner結晶化状態を放射光X線回折による精密構造解析を行うことによって明かにした。 分子性導体(DI-DCNQI)2Agの低温相は、電子相関による電荷秩序状態であることが、理論、核磁気共鳴、ラマンスペクトルなどから予想されていた。一次元の伝導パス内での電荷秩序状態はほぼ確実であると考えられていた。我々は精密解析によって低温相の構造を明らかにすることにより、Wignerが1930年代に予言した希薄な電荷が体心正方格子を組んでいることを初めて明らかにした。この電荷秩序状態の解析には二つの大きな要素が関係している。ひとつは新しい幾何学的な関係にある螺旋フラストレーションであり、もう一つは一つの結晶構造内で電荷秩序一次元鎖と二量化一次元鎖が共存することである。両者ともまったく新しい概念である。解かれた結果は電子相関という一つの秩序変数として結晶化を表すことができる。すなわち、競合するかのような複数の秩序変数が、隠れた秩序変数によって新しい系の状態を実現する。 Wigner Crystallization in (DI-DCNQI)_2Ag Detected by Synchrotron Radiation X-Ray Diffraction T.Kakiuchi, Y.Wakabayashi, H.Sawa, T.Itou, K.Kanoda, Phys Rev.Lett.98 (2007) 066402-1-066402-4
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