研究概要 |
1.テルピリジン固体発光の機構解析 効率よい発光を示す板状結晶とほとんど発光しない針状結晶およびアモルファス固体について、発光機構を検討した。その結果、光励起状態からの非放射失活速度定数Knrについて、板状結晶はKnr=1.7x10^8s^<-1>であったのに対して針状結晶とアモルファス固体のKnrは1.2-1.8x10^9s^<-1>と約10倍大きいことがわかった。一方、放射失活(=発光)速度定数Krは同程度の値(2-4x10^7s^<-1>であった。以上のことから、非放射失活過程の違いが発光特性を決定づけることが明らかとなった。 2.新しい集積構造変換型可逆発光スイッチ材料:ピエゾクロミック発光材料 高い蛍光性を有するテトラフェニルピレン(TPPy)に水素結合部位(アミド基)を四つ導入したC6TPPyは、固体中でカラム構造を形成し強い青色発光(435nm)を示す。この固体を押しつぶすと発光は緑色(472nm)に変化し、200℃,30分の加熱により青色に戻ることを確認した。この結果は、加圧-加熱サイクルによるピエゾクロミック発光という、これまで報告例のほとんどない新規性の高い有機固体発光を見出したと同時に、新しい集積構造変換型発光スイッチ材料としての応用が期待できることから、大きな成果であるといえる。 さらに、ペリレン蛍光ユニットをアミド置換したPBAも圧力負荷により固体発光が黄色から赤色に変化することを見出し、より広範囲な波長においてピエゾクロミック発光材料の開発の可能性を示した。
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