研究概要 |
1.ペリレンを発光ユニットとするピエゾクロミック発光材料の開発 18年度に見出した,新しい集積構造変換型可逆発光スイッチであるピエゾクロミック発光材料の展開として,ペリレンを発光ユニットとする新規分子を種々設計し評価をおこなった。 高い蛍光性を有するペリレンに水素結合部位(アミド基)を二つ導入したペリレンビスアミド(PBA)は,固体中で組織構造を形成し強い黄色発光(540nm)を示す。この固体を押しつぶすと発光は赤色(610nm)に変化した。この発光変化はモノマー/エキサイマー発光機構に基づくものであることを明らかにした。この成果により,ピレン系で見出した青之緑色発光スイッチングと考え合わせ,より広範囲な波長においてピエゾクロミック発光材料の開発の可能性を示した。 さらに,圧力負荷にともなう発光変化のし易さがアミド基側鎖の構造に依存することを見出し,ピエゾクロミック発光材料の圧力感受性制御にむけた基礎的な知見が得られた。 2.結晶構造に依存する固体ESIPT発光 分子内水素結合の関与する励起状態分子内プロトン移動(ESIPT)蛍光を示す2-(2'-ヒドロキシフェニル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン(1)が,結晶構造に依存して大きく異なる固体ESIPT発光〔495nm(青緑)および530nm(黄色)]を示すことを見出した。化合物1は分子パッキングに依存して異なる固体ESIPT発光を示した初めての系であり,この成果は,ESIPT機構に基づく大きな発光変化を示す新しい集積構造変換型可逆発光スイッチの開発に向けた重要な知見である。
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