単層カーボンナノチューブ(CNT)は半導体と金属帯から成るカイラル構造体であり、強いファンデアワ-ルスのため、束(バンドル)として存在し、材料としての使用は難しい。CNTの材料への応用には半導体と金属隊との分離が不可欠である。このバンドルから単一のカイラル構造体を分散させ、その中から選択的にカイラル構造体を選別できる方法の開発を目的とする。1)水系界面活性剤や高分子等の存在下で、超音波射による力を加えて、CNTを孤立させると同時に分散材の吸着またはラッピングにより安定化が起こる。チップ型とホーン型の超音波発生器を用いて、安定な分散状態を作成する研究を行った。CNTのバンドルを孤立分散化させる分散材にはカルボキシメチルセルローズ(CMC)及びドデシル硫酸ソーダ(SDS)を用いて、安定なCNTの分散状態が得られた。2種類の分散剤CMC及びSDSを用いて、超音波分散・遠心分離後、吸収、蛍光(PL)、Raman測定及び光散乱(DLS)の測定を行った。金属帯CNTのM_<11>(500nm)、半導体GNTのS_<11>(729nm)バンドおよびS_<22>(1130nm)バンドの各スペクトルについて、海度上昇と温度下降(20〜70℃)による安定性の比較をSDS系とCMC系との比較を行った。CMC分散剤系では温度上昇と温度下降では不可逆的であった。2)CNTのCMC分散剤の特定吸収帯M_<11>、S_<11>、及びS_<22>にレーザ共鳴励起による選択的光熱変換による不溶化の研究を行った。波長723nm、70mWの条件で長時間にわたり照射し、吸収スペクトル及びRaman散乱の測定を行った。最終的にはM_<11>バンドのみのスペクトルが得られ、S_<11>およびS_<22>バンドは消滅した。この結果は半導体の選択的な、選別除去が行われたことを意味している。レーザ励起により、速やかな光-熱変換が起こり、局部的な温度上昇から分散系の不安定化が起こった結果である。各特定吸収波長で照射されたカイラルCNTは系外に分離され、結果としてカイラル構造体の選択的分離が可能となることが分かった。
|