研究概要 |
本年度は真空中での膜成長の実験に並行して、溶液環境で作成したSEIRA活性金属膜の構造制御の研究を開始した(長尾,Enders)。ナノ構造をその場モニター法を用いて精密に規定・制御し、ナノ構造とSEIRA活性度の対応関係について系統的に調べる。具体的には、金コロイド-SiO_2/Si界面で成長させたナノ粒子膜のin situ成長モニター及び制御を行い、作成した膜の赤外・可視光学特性とFE-SEMやAFMで評価した構造情報との関連性を解明した。モニター手法には赤外光そのものを用い、膜のプラズモン共鳴によるスペクトル形状とSEIRA活性度との対応関係、あるいは走査電子顕微鏡のex situ観察とSEIRA活性度との対応関係を詳細に調べた。また、作製したSEIRAセンサー膜の応用に関しては、グループ内ですでに経験を有するDNA試料や外部研究機関から提供された分子を用いて、製作した材料の試験を行った。その結果、単分子層吸着にも拘わらず、20パーセントにも及ぶ赤外吸収強度を実現するSEIRA活性膜を製作することに成功し、特許出願やプレス発表を行った。 また、原子スケールプラズモンの研究ではAu原子細線やIn原子細線のEELS研究を進め、パイエルス転移などの金属絶縁体転移が一次元朝永プラズモンの分散関係に及ぼす影響について、世界で初めての測定を行い、国際会議・依頼セミナーでの講演や学術誌への投稿を行った(長尾,劉,柳沼)。 以上の成果が契機となり、本年度はドイツ、スペイン、アメリカの大学から共同研究の申し出を受けるなど、研究の認知度が高まりつつある。
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