研究概要 |
平成18年度に導入した100V高速パルス強誘電体分極評価装置とX線計測システムを平成19年度では立ち上げ、強誘電体薄膜がナノ秒オーダーのパルス電場によって誘起される格子の電気歪を放射光パルスX線回折測定によって検出できた。 SPring-8蓄積リングの"時計"であるRF信号を508MHzカウンターを介してパルス信号を高速パルス強誘電体分極評価装置は受けて試料へのナノ秒オーダーのパルス電場を印加した。これによって試料へのX線の入射のタイミングと同期した。 SrRu03薄膜(下部電極)上に有機金属気相成長法により作製した膜厚750nmの強誘電体単結晶薄膜Pb(Zr_<0.25>,Ti_<0.75>)O_3(PZT)を調べた。白金(直径100μm)の上部電極同士をプローバーと呼ばれる先端R 10μmの電極針で押さえ、幅200ns、周期約800nsのパルス電圧を試料に印加した。最初に波高30Vのパルスを印加し、PZT薄膜内にPr+の残留分極状態にした後、0,10,20,30,40,50,60,70V のそれぞれの波高について、PZT 004 回折付近でθ-2θスキャンし、時分割X線検出器を用いて回折X線強度を時間、角度の関数として記録した。この研究のために、X線マイクロビームを形成するとともに時間分解測定系も準備した。 電場印加時にPZT 004 主ピークは低角側にシフトした。また、低角側に別ピークを観察できた。これは、パルス電場に応じて、薄膜の格子に電気歪みが生じ、格子が伸張したことを意味する。上部電極一下部電極間の電圧25Vでは、主ピークから見積もられる歪量Δd/dは0.0004であった。得られた圧電定数d_<33>は13pm/Vであった。また、別ピークから得られた圧電定数d_<33>は約50pm/Vであった。2個のピークが現れた理由も含め、データを検討している。
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