研究概要 |
ナノ秒オーダーのパルス電場によって薄膜内で誘起される格子歪を検出する時分割X線測定と誘電率の高速測定を組み合わせた新しいシンクロトロン回折法を開発した。その方法を強誘電体エピタキシャル薄膜や多結晶薄膜の構造評価に適用し、ナノ秒オーダーのパルス電場によって誘起される格子の電気歪を放射光パルスX線回折測定によって検出できた。回折ピークシフト量から圧電定数を見積もった。 SPring-8蓄積リングの"時計"であるRF信号を508MHzカウンターを介してパルス信号を高速パルス強誘電体分極評価装置は受けて試料へのナノ秒オーダーのパルス電場を印加した。これによって試料へのX線の入射のタイミングと同期した。 SrRu03薄膜(下部電極)上に有機金属気相成長法により作製した膜厚750nmの強誘電体単結晶薄膜Pb(Zr_<0.25>,Ti_<0.75>)O_3(PZT)を調べた。白金(直径100μm)の上部電極同士をプローバーと呼ばれる先端R 10μmの電極針で押さえ、幅200ns、周期約800nsのパルス電圧を試料に印加した。最初に波高30Vのパルスを印加し、PZT薄膜内にPr+の残留分極状態にした後、0,10,20,30,40,50,60,70Vのそれぞれの波高について、PZT004回折付近でθ-2θスキャンし、時分割X線検出器を用いて回折X線強度を時間、角度の関数として記録した。 電場印加時にPZT004主ピークは低角側にシフトした。また、低角側に別ピークを観察できた。これは、パルス電場に応じて、薄膜の格子に電気歪(電場誘起歪)が生じ、格子が伸張したことを意味する。印加電圧25Vでは、主ピークから見積もられる歪量Δd/dは0.0004であった。得られた圧電定数d_<33>は13pm/Vであった。また、別ピークから得られた圧電定数d_<33>は約50pm/Vであった。2個のピークが現れた理由も含め、データを検討している。
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