昨年度はカエル視細胞の3量体Gタンパク質トランスデューシンαサブユニット(Gαt)を近赤外蛍光標識することに成功してが、本年度は750nmのレーザーを導入した全反射顕微鏡によってGαtの一分子挙動が光依存的に変化する事を明らかにすることができた。暗黒下でのGαtはロドプシンと相互作用せずに自由に膜上を動いており、光照射によって光退色したロドプシン(Rh*)が表れるとGαt-Rh*複合体を作って顕著に拡散係数が低下することが分かった。このとき、Gαt-Rh*の拡散係数はロドプシンの中でも遅い部類に属し、2量体形成あるいはRh周囲でのmicrodomain形成がこの複合体の拡散係数を抑えている可能性が示唆された。さらに、複合体はGTPの添加に伴って解離し、GαtはGTP型でまた自由に膜上を拡散するようになることも確認できた。GTP型Gαtは円板膜上を高速で拡散するとともに円板膜辺縁部のチューブリン繊維が局在する箇所に集積することや、そこでの会合・離散が繰りかえされることも認められた。光条件に依存したGαtトラフィッキングプロセスの一場面を捉えることができたものと考えられる。 当初690nmのレーザーで励起して観察を試みていたが励起光によるRh退色によって明確な明暗の差は認められなかった。そのためより長波長の励起光として750nmレーザーの導入に努力したが、実験開始が昨年秋と遅れ、成果発表は生物物理学会における口頭発表に留まった。
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