研究概要 |
本研究の目的は、脊椎動物視細胞外節円板膜上でのG蛋白質トランスデューシンによる標的酵素cGMP加水分解酵素(PDE)の活性化機序を1分子のレベルで明らかにすること、また明順応の一貫として起こるトランスデューシンの外節から内節へのダイナミックな移動を1分子観察し,その分子機構の解明に寄与することである.まず最初にとり組むべき目的していたG蛋白質トランスデューシンの近赤外蛍光による標識に成功し、標識後も正常な機能を維持していることを確認した。この標識を用い、750nmレーザー励起によって暗黒条件でのトランスデューシンの拡散運動を始めて撮影することに成功した。トランスデューシンはロドプシンより高速に拡散しており、可視光照射に伴って光退色ロドプシン・トランスデューシン複合体が形成されるとその拡散が顕著に遅くなることを確認した。さらに、GTP添加に伴うGTP-GDP交換後は複合体が解離することによってトランスデューシンの拡散係数が顕著に増加することも確認できた。ロドプシン・トランスデューシン複合体の拡散係数はロドプシンのそれに較べて小さく、また脱コレステロールによってmicrodomain形成を抑制するとロドプシンと同じレベルの拡散運動を示すようになるため、ロドプシンとトランスデューシンの反応の場はmicodomainの界面であることが強く示唆されるに至った。Microdomainの形成機序についてはまだ未解明であるが、G蛋白質信号系の新たな側面を明らかにできつつある。外節から内節へのトラフィッキングについては生細胞への蛍光標識トランスデューシンの導入に成功していないが、GTP型トランスデューシンは円板膜周辺部のチューブリン繊維に凝集する傾向があることを発見しており、今後の研究に展望が得られている。円板膜でのトランスデューシンの挙動については現在論文準備中である。
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