研究概要 |
初年度は、まず高分子合成に適したマイクロリアクターの作製技術の確立と、直鎖ポリマー合成条件の最適化を行った。現有のマスクレス露光装置を利用し、シリコン基板の両面に流路パターンを投影したのちドライエッチングを連続して行うことで、基板の両面に流路を作製した。これに段階的にパイレックスガラスを陽極接合で結合させ蓋をし、マイクロミキサーを作製する技術を確立した。得られたマイクロミキサーを用いてポリアミノ酸合成を行ったところ、側鎖をBoc基で保護したLys-NCAを用いたポリリジンの合成においては流量を変化させることにより平均分子量が7,800〜18,000のものを作り分けることに成功した。各反応で得られたポリマーの分子量分布は1.19〜1.33程度であった。また、2種のアミノ酸NCAを用いたコポリマー合成においても、マクロスケールでの反応よりも高い反応制御性を示した。これらの結果から、作製したマイクロリアクターによりNCAの重合反応の精密制御が可能であることが示された。 次に、アミノ酸のブロック重合を行った。ポリアミノ酸合成で用いたものと同じマイクロリアクターシステムを用いて、トリペプチドの重合反応を行った。分子量分布は狭いものが得られたものの、重合度が大きいものを得ることは困難であった。また、ポリリジンデンドリマーの合成にも着手した。同じマイクロリアクターシステムを用いて側鎖無保護のリジンの重合反応を行ったところ、3段階までの合成に成功した。しかしながら、主鎖アミノ基と側鎖アミノ基で反応性が異なるためか、均質な分岐物が得られていなかった。
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