研究概要 |
以下に研究内容を3つに分けて記載する. 1.量子ビットデバイス作製,量子状態制御,量子ビット読み出し Bi2212固有ジョセフソン接合を用いて,Martinisらによって提案された位相量子ビットを実現する.単一ジョセフソン接合のダイナミクスはRSJモデルと呼ばれる受動素子モデルで近似できることが知られており,接合を構成する電極間の電子波動関数の位相差を座標変数とし,ジョセフソンエネルギーに相当する1次元ポテンシャル中を粒子が運動するという描像が成り立つ.十分低温においてエネルギーは量子化されるため,任意の2準位を量子ビットの|0>と|1>に対応させることができ,これを位相量子ビットと呼ぶ.本年度は主に1ビット動作に焦点を絞って,量子化エネルギーとラビ振動の観測が主な課題となった.マイクロ波照射により、マルチプォトン共鳴による巨視的量子トンネルが強化されること、共鳴周波数とスイッチング電流が単ジョセフソン接合の理論とほぼ一致することが確認された.また量子ビット動作確認のためには、信号線からの熱及びノイズの流入の最小化が肝要であるとの観点から、これらの改良を図った.ラビ振動つまり量子1ビットの動作確認は次年度以降の課題として残った. 2.理論解析・数値解析 他の研究グループから固有ジョセフソン接合間の電気的、磁気的結合により量子トンネルの頻度が接合数の2乗倍で強化されることが発表され、この検証を数値計算により行った.解析は現在も進行中である.また実験的にも検証を行い、予備的な結果ではあるが、素子の作製方法によって生じる現象に違いが生じることがわかった。我々のFIBを用いた作製方法では、このような結合が弱く量子トンネルの頻度は単接合の場合とほぼ変化がないことがわかった。 3.量子計算アルゴリズム 本年度は,我々が提案しているニューロ様量子計算アルゴリズムを高温超伝導位相量子ビットへ適用し、その性能評価を行った。組み合わせ最適化問題における計算時間と正解率の関係を明らかにした。
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