研究概要 |
(1)ナノシート共振器アレイにおける電磁場解析周期系の電磁場解析に適したRCWA法の市販数値計算プログラムを購入し,これまで境界要素法で行ってきたのと同様の反射スペクトル,共振モードなどの解析を可能にした.今年度は特に,ポインティングベクトルに注目することにより,共振器へのエネルギーの流入形態に関する理解を深め,各部の寸法と吸収や電場増強(ラマン増強)との間に存在する基本的な関係を把握した. (2)ナノシート共振器アレイの作製プロセスの確立昨年度に引き続き,誘電体多層膜の断面の研磨,エッチング,金スパッタ,多層膜除去,によるナノシート共振器アレイの作製プロセスの確立を目指した.昨年度はSiO_2/Si_3N_4多層膜からのアレイ作製を試み,ギャップ幅10nmの共振器の作製に成功したものの,材料選択に問題があったことも明らかになっていた.今年度は多層膜材料を入れ替え,エッチング液も変更することにより,再現性の良い共振器アレイの作製を可能にした.平滑で緻密な膜を得るために,出発材料である多層膜の作製には,民間のイオンビームスパッタリング法による成膜サービス事業を利用した.ギャップ幅5nmの作製を目指したが,実際に作製できたもののギャップ幅は7nmであった. (3)ナノシート共振器アレイによるラマン増強の実証今年度はようやくナノシート共振器アレイによるラマン増強効果の実証に成功した.今回は簡易的な評価のため,共振器アレイのギャップ部を溶解して空洞とし,そこにイソプロピルアルコールを満たし,そのラマン信号がプラズモン共鳴により増強されることを確認した.計算により見積もっていたラマン増強度1×10^4に比べ,現実に観測されたラマン増強度は,約25分の1の4×103であった.これまで観察されてきた金表面からと思われる蛍光の増強現象も観測された.
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