研究課題
既存の多変量解析の手法と比較してその普及に遅れのある非負行列分解に対して効率的な手法を提案し、その計算実験による性能評価を行うことを本年度の研究の目標として設定した。非負行列分解の手法の多くは誤差尺度としてフロベニウス・ノルムを用いているが、座標軸の上下方向へのずれや回転などに起因するノイズに影響を受けやすいこのノルムの欠点にも対処したいと考えた。以上の目的のためにフロベニウス・ノルムに代えてEarth Mover's Distance(EMD)を誤差尺度として利用することを検討した。この場合、問題の構造を利用するとネットワーク最適化問題を繰り返し解くことによって非負行列分解を行うことができる。しかし、そのネットワーク最適化間題は原問題のサイズの2乗の大きさに比例するサイズとなり、小さな画像データでさえ容易に計算機の能力を超える大きさになる。このサイズの増大に対して、以下の成果を得た。1.EMDを計算する際の基礎となる距離に拘わらず、解くべきネットワーク最適化問題の制約本数を半分に減らすことができる。2.EMDを計算する際の基礎となる距離が1-ノルム、無限大ノルム、あるいはD-ノルムのいずれかである場合には、解くべきネットワーク最適化問題を、サイズが原問題のサイズの線形のオーダーである等価な問題に変換できる。線形オーダーに掛かる係数は4ないし8と小さい。3.手書き文字の判別問題に対して以上の結果を利用した実験では、計算時間を約10分の1に短縮できた。
すべて 2009 2008 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
Journal of the Operations Reseach Society of Japan 51
ページ: 203-212
Computers and Mathematics with Applications 55
ページ: 760-775
http://infoshako.sk.tsukuba.ac.jp/~yamamoto/