研究概要 |
近年,整備の進みつつある時空間データは,一般社会ではリアルタイムマーケテイングや在庫管理などの分野で活発に利用されるようになってきている.ところが研究分野では,未だ旧来の方法論,即ち,時空間データを時間軸上で離散的に切断し,いわゆるクロスセクションデータに変換した上で分析を行うという場合が多い.このアプローチは,各時点のデータに対して既存の空間解析手法をそのまま適用できるという利点がある一方で,空間現象の時間変化を追跡するには常に適しているとは言えない.時空間を時間軸あるいは空間軸で切断した上で分析を行うと,時空間上で起こる大域的な分布や構造の変化を見落としてしまう可能性があり,時空間をある次元の断面で切断しない分析手法が必要である. そこで本研究では,点分布とサーフェス分布について,時空間データ自体の固有の性質に着目した新たな解析手法の開発を実施する.以前申請者らの実施した研究成果をふまえ,ここでは特に,汎用性の高い手法の開発を目指す.例えば点分布については,点の発生と消滅という基本的な時空間概念に加え,点クラスターの発生や消滅,移動,変形などを取り扱う.またサーフェス分布については,極大点,極小点,鞍点の発生と消滅という時空間概念に加え,より高度な時空間概念,例えば,極大点,極小点,鞍点の移動や合成,それらの集合の変形などを取り上げる.このようなアプローチにより,より複雑な現象を取り扱うことのできる,汎用性の高い時空間解析手法の提案を目指す.
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