本研究の目的は、日本のハイテクベンチャーの活性化のための課題(人材調達、知的財産権の役割、利益相反)を明確にすることである。本経過報告書ではまず研究活動の内容を概観し、関連の研究発表や出版物について挙げる。 人材調達の課題について、医薬品開発バイオベンチャー企業の日米比較を行なった。その結果、米国のバイオベンチャーの平均従業員数は同年齢で比戟すると日本の3倍であった。さらに、米国における医薬品開発バイオベンチャーの総従業員数は日本の40倍以上にのぼる。これは、雇用問題が日本のバイオベンチャーの競争力に限界を与えていることを示している。日本におけるその他の理系分野のベンチャーでも状況は同様かもしれない。これらの結果は、国際特許流通セミナー2007(1月、東京にて開催)及びAUTM(3月、サンフランシスコにて開催)で発表した。今後Journal of Technology Transfer10月号と拙書Bridging Islandsでも出版の予定である。 大手電気メーカーに対し社内年金制度の変化についてインタビューも行ない、大手製造業における早期退職率について分析をした。この結果についてもBridging Islandsで述べる。 知的財産権の問題については、日本のベンチャー企業20社について知的財産権の活用実態につき調査を行なった。この結果はBridging Islandsで述べる。この実態調査からわかることは、知的財産保護はあらゆる技術分野のベンチャーにとって重要であるということである。さらに、東京地裁の特許侵害訴訟について予備分析を行なったが、ベンチャー企業の侵害訴訟遂行の状況(原告/被告を問わず)は他の一般企業と同様であることが分かった。これについてもBridging Islandsにて述べる。 AUTM Journal及びthe Journal of Technology Transferでは、大企業が継続的に大学の研究成果を優先的に入手できる状況について考察している。この分析結果は、国際特許流通セミナー2007(1月、東京にて開催)及びAUTM(3月、サンフランシスコにて開催)で発表した。 3月には(a)ワシントンDC近郊(於NIH)にてアリゾナ州立大学ワシントンDC代表者と(b)サンフランシスコにて日米のバイオベンチャーに詳しい専門家とのディスカッションを行ない、日米バイオベンチャーの知的財産マネジメントと両者が抱えるその他の問題について比較を行なった。 利益相反の問題については、数ヶ所の大学からガイドラインを入手し、日本においてこれに関するインタビューを行なった。3月には同様のテーマでNIHでもインタビューを行なった。このインタビューは得るところが多く、両国それぞれが直面している未解決の問題が浮き彫りになった。
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