研究概要 |
平成18年度は以下の研究成果を得た。 ・貸出債権ポートフォリオの構築モデルに関して、保険商品関連研究を中心に複数の研究成果を得た。Kijima(2006)はエッシャー変換およびワン変換による保険商品の価格付けを行った。また、Fujiwara and Kijima(2007)およびKabanov, Kijima and Rinaz(2007)では保険商品のリスク管理のために必要となる正の金利モデルとモンテカルロシミュレーションの開発を行った。また、Tanaka(2006)および田中、山田、渡部(2006)では様々な金融商品価格の効率的な計算方法を示した。 ・VaRの精緻について、Kawata and Kijima(2007)では、長期の金融資産のリスク評価のためのレジームスイッチモデルを提案した。 ・企業倒産連鎖、企業再生のモデル化において、芝田が、企業と銀行の間に情報の非対称性を仮定し、企業の業績が悪化する場合における企業の最適倒産戦略について、モデル分析を試みた。具体的には,企業が清算(流動化)されるとき企業と銀行は清算コストを観察できるが、企業が清算される前には企業のみ清算コストを観察できると仮定する。また、また企業の倒産戦略として法的倒産および私的倒産の2つを仮定している。こうした情報の非対称性かつ2つの倒産戦略を仮定した上で、本研究では,企業は清算を回避するため、企業はどのような最適倒産戦略を選択するかについて,モデル分析を試みた。 西出は、情報の非対称性が取引価格や投資家の戦略などの市場均衡に与える影響について主として考察してきた。第1に得られた結果としてKyle型モデルにおける競争的マーケット・メーカーの仮定を緩め、不完全競争的マーケット・メーカーが存在する市場モデルを構築した。その結果として、(1)不完全競争性が市場流動性を低下させ、(2)価格変化が負の相関を持つことなどを示した。以上の研究は大和国際ワークショップやQMF(オーストラリア)などの国際会議で発表し、議論を深めていった。
|