研究課題
大規模広域災害に効果的に対応するため、子どもから高齢者までを含む一般の地域住民、および、地方自治体の一般職員を対象にした防災教育技法を開発した。その上で、実践場面でそれらの有効性を検証するとともに、教育学、心理学、社会学的見地から、その意義を理論的に位置づけた。また、こうした研究を、自然科学と社会科学を融合した形式で進めることの意義と課題についても理論的な検討を行った。具体的には、第1に、研究代表者ら考案した、ゲーミング形式の防災教育ツール「クロスロード」について、従来版の「神戸編」「市民編」に引き続き、多様なハザード、多様な災害対応場面に即応するための続編(「要援護者編」、「学校安全編」、「津波対策編」、「災害ボランティア編」など)を開発、その効果を検証し、成果を単行本として刊行した(吉川・矢守・杉浦,印刷中)。第2に、「クロスロード」が、「リスク社会」におけるにリスク・コミュニケーション手法一般に対して有する理論的意義について、リスク論、実践共同体学習論、ナラティヴ論の観点から理論的に考察し、その成果を国際的な災害研究誌に公表した(Yamori,.2007;2008)。第3に、「クロスロード」が、被災から得られた体験・教訓を複数の現場を越えてインターローカルに接続するための手法として有効であることをも理論的に示した。さらに、こうしたタイプの実践的な防災研究を自然科学と社会科学を融合した形式で進めることの意義と課題についても、「防災人間科学」という新しいコンセプトを提起しつつ理論的に検証した。その上で、社会科学系の防災研究が今後進むべき方向性について、「防災人間科学」に依拠した具体的な提案を行った(矢守,印刷中ほか)。
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