研究概要 |
現実的な多列結合継手として碁盤目状および千鳥形式に配列した複合材/金属のボルト接合試験片を用い,引張り型荷重下の損傷検出試験を実施した.この試験より,センサボルトを用いて多列継手においても力学挙動のモニタリングの検出ができることを示した.さらに,配列形式の違いにより検出可能な範囲は異なるが,複合材と金属間の固着がとけるときの荷重や,継手の荷重とひずみが線形的に増加する領域の傾きの変化に基づいて,センサボルト周囲のボルト欠損,緩みや複合材損傷の検出が可能であることを明らかにした. 回転部材のセンシング試験として,回転曲げ繰返し荷重下でのワイヤレスモニタリングによる損傷検出試験を行った.この試験より,ワイヤレスに計測したひずみ波形のサンプリング時間の平均値の変化に基づいて,表面でのき裂発生・進展を検出できることを示した.サンプリング時間の平均値は発振回路法で測定が容易であり,回転部材においても軸力の場合と同様に発振回路法による損傷検出が有効であることが明らかとなった. 発振回路法によるひずみ計測に対して,計測回路中に組み込んだひずみゲージの抵抗値変化と回路出力(周波数)変化を関連づける係数の周波数依存性を考慮することにより,ひずみの測定値の精度向上および安定性の向上をはかることができた.さらに,損傷検出試験において,ひずみ計測と同時にサーミスタにより微小な温度変化の測定を行い,その結果を用いてひずみ測定値を補正することにより,測定値の精度および損傷の有無の判定精度を向上させることができた.サーミスタによる温度測定にもひずみ計測同様に発振回路法を用いている.発振回路法は多くのセンサに用いることができる汎用性の高い方法であることも確認できた. また,新たに薄膜荷重センサを設計・製作し,荷重測定における基本的な安定性を評価した.本センサは,複合材/金属のボルト接合に実用上十分な精度で適用可能なものであることがわかった.
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