研究概要 |
BOCDAひずみ計測システムによるコンクリートのひび割れ検知技術の検証を目的に,フィールド実験を実施した。また,ひび割れ幅の定量的同定のために,ひずみ伝達モデルを解析した。従来を上回るBOCDAシステムの高い空間分解能を利用した本技術は,基礎杭に光ファイバを事前に埋め込むことで,目視できない箇所の安全性向上に大きく寄与できる。 実フィールドに先立ち実施した室内構造試験によれば,目視レベル以下の10〜20ミクロン幅のひび割れを検知することができた。実フィールドでは,コンクリート歩道橋の桁下面(約26m長)に光ファイバを設置し,平成20年1月と9月にひずみ計測を実施した。BOCDAシステムによって計測されたひずみ分布結果によれば,事前試験のひび割れ発生箇所で見られた局所的なひずみ変化は確認されなかった。本フィールド試験を通じて,本技術の適用性を確認するとともに,同期間内においてひび割れが発生していないことがわかった。 構造体に発生したひび割れ幅を正確に同定するためには,構造体から光ファイバまでのひずみ伝達機構に加えて,センサの空間分解能を考慮する必要がある。そこで,構造体から接着剤,光ファイバまでの応力伝達をモデル化し,センサの信号検知強度が空間分解能内で正規分布している仮定のもと,解析を実施した。この結果は,コンクリート試験体を用いた実験結果と良く一致した。本モデルにより,構造体のひずみと計測結果の関係が明らかになり,実装方法によって,必要に応じたセンサ感度を調整することができる。 本研究を通じて,今までにないコンクリート構造物のモニタリング手法が確立できた。ひび割れのように発生場所がわからない事象に対しては,本技術のような分布型光ファイバセンサが唯一その解決策となるため,それを実験的且つ解析的に解明した意義は大きい。
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