研究概要 |
最初に微動と重力の観測記録を同時に逆解析するためのアルゴリズムを検討した。基本的なアルゴリズムを決定することが重要であるため,計算量が少なくてよい2次元構造を推定する問題を対象とした。すなわち,もっとも単純な問題設定として,微動のアレー観測から求められる位相速度と重力のブーゲー異常を同時に満足する2次元地盤構造を推定するためのアルゴリズムを検討した。これは,従来用いられてきた,微動アレーの観測点での速度構造を密度構造を推定する際のコントロールポイントとして利用する,と云う一方的な関係を拡張し,速度構造と密度構造が互いに影響しあいながら最適解を探索する,というアルゴリズムとしたものである。一回の逆解析で密度と速度構造を同時に求めようとすると解が不安定となって,適切に収束しないことが明らかとなったため,多段階の収束計算を行った。 次に簡単な数値モデルを作成し,アルゴリズムの妥当性の検討を行った。その結果,観測点間の基盤境界の補間精度が基盤構造モデルの作成にあたって大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。そこで,補間のために重力異常(ブーゲー異常)から求められる重力基盤形状を用いたところ基盤構造モデルの精度向上に有効であることがわかった。 さらに,提案手法を実データで検証するためのテストフィールドとして,鳥取県弓ヶ浜半島,つくば市周辺,台湾新竹市を候補地として選定した。弓ヶ浜半島ではきわめて密な重力観測結果といくつかの微動アレー観測結果があり,しかもリファレンスとなり得る反射法探査結果があるため,手法の検証に適切である。また,つくば市周辺も同様のデータが整備されているが,密度構造と速度構造の対応の悪い地域のあることが知られており,提案手法の適用限界を知る上で有用である。新竹市は構造未知の地域として新たに重力測定を行い,提案手法を実際に応用するフィールドとする。
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