目黒川下流地域について、航空レーザー測量による崖っぷち盛土の同定手法について検討した。高さ精度15cm、水平精度50cmのレーザーデータについて、自動地物判別、手動地物判別を行い、ステレオペア判読による地盤高さを求めて詳細DEMを作成した。しかし、この結果について現地調査を行ったところ、盛土の抽出精度は満足できる水準に達しておらず、実際の精度は航空写真測量と同様であることが判明した。これは、対象とする都市域(住宅密集地)では、地物が狭い範囲で急激に変化し、障害物が非常に多いため、レーザーの輝点が必ずしも地山に打たれていない事が原因である。そこで、米軍撮影空中写真(1947年撮影)と現在の空中写真を基に航空写真測量によるDEMを作成し、差分による盛土の抽出を試みた。その結果、精度は良好であるが、対象地域の開発が、ほぼ戦前に終了していたため、大規模な盛土の抽出は測量的手法では難しい事が判明した。 また、全域の地表踏査を行った結果、対象地域の斜面には大谷石の空石積擁壁が広く分布している事が判明した。大谷石は、耐火性に優れているため、1923年関東地震以後に東京で一般に用いられるようになった。しかし、この種の擁壁は、過去の地震によってしばしば倒壊しており、耐震性が期待できない。また、古いコンクリート擁壁には、しばしば変形が認められる等、「崖っぷち」の構成要素が広く分布する事が判明した。今回の調査を基に、「崖っぷち」の調査表を作成したので、今後は全数調査を行って、分布を確定する予定である。
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