研究概要 |
今年度は,解析モデルの作成,地盤パラメータの検討,中越沖地震調査による事例の検討の3点を実施した.それらの成果は以下の通りである. 1.「崖っぷち」のリスク評価を行うため,目黒川下流域において,広域のFEM解析モデルを作成した.このモデルの地表部は,昨年作成した詳細地形モデルを用いた.解析に用いるハードウェアの物理的制約から,地質構造は,基盤,ローム,盛土(沖積層)に単純化した.全てを弾性と仮定したtest runにおいて,崖っぷちの地震動は,台地の内部に比べて2倍以上増幅し,地形効果が確認された.平成20年度は,このモデルを用いて地盤強度パラメータを様々に変化させ,崖っぷちのリスク評価を行う予定である.2.谷埋め盛土の不撹乱試料をサンプリングし,繰り返し三軸圧縮試験を行った.その結果,対象地域に分布する盛土材としてのロームは,ほぼ粘性土として動的性質(繰り返しせん断による剛性率の低下傾向)を有している事がわかった. 3.2007年新潟県中越沖地震では、様々な種類、規模の災害が発生した。刈羽原発の被害が注目を集めたが、斜面災害も、柏崎市とその郊外の比較的狭い地域にまとまって発生し、重要な事例が多く得られた。同様の都市型の斜面災害は、過去の震災においても発生しているが、今回は、斜面災害の形態と空間分布が、都市「柏崎」の発展の過程に深く関連している点が特徴である.すなわち,高リスクな都市構成要素(盛土や古い擁壁)の中心市街での蓄積、及びそれらの郊外への拡散を,災害発生要因として指摘することができる。これらは、人口と経済活動のドーナツ化現象の結果であり、わが国の多くの都市に共通した問題である。
|