本年度はエクソン領域にあるSNPをマーカーにしてアレル間の発現量の比をキャピラリー自動シークエンサーによる蛍光SSCP法(PLACE-SSCP法)で高精度に定量する系を確立した。解析結果を定量するためには、SNPアレル頻度定量用に開発した「QSNPlite」ソフトウエアを利用した。このシステムにより42種類のSTSを解析しPCR反応前の鋳型中の2つのアレルの比を高精度(R^2=0.994)に定量できることを確認した。また、SSCP解析で各アレルの分離が不十分な場合に、プライマーにSNP周辺配列と相補な9塩基程度のタグ配列をつけることにより分離を改善する方法を開発し、この方法によっても高精度な定量が可能なことを確認した。予備実験の結果および文献情報より、解析対象とする細胞で発現レベルが低い遺伝子を選んだ場合にノイズの影響が大きいために再現性のある結果を得ることが困難であることがわかり、この問題を回避するため事前にデータベースに公開されている発現アレイのデータを確認することが有用であることがわかった。最近になってHapMap構築に利用した検体細胞を用いて発現アレイで調べた各遺伝子の発現レベルとSNPのジェノタイプとの関連解析を行った論文が複数報告された。これらはアレル間の発現を比較しようとする本研究とは異なるが、解析対象とする遺伝子の選択に重要な情報を与えてくれるものである。これらの情報を我々が最近構築した詳細な日本人集団ハプロタイプ地図に表示できるようにしており、情報学的解析を利用してより効率よく確実にアレル特異的発現に関連したハプロタイプを検出する体制を整えた。
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