平成18年度の研究実績 1.イネゲノムDNA変異の大規模解析を実施した。イネ染色体上の22箇所の領域、計26kbのDNA配列を、栽培イネOryza sativaとその近縁野生種の30アクセッションについて決定した。DNA変異の系統解析の結果、日本型イネssp.japonicaとインド型イネssp.indicaは、野生種O.rufipogonから独立に起原したことが明らかになった。栽培種の内、インド型イネは高い遺伝的変異(π=0.0024)を含むのに対し、日本型イネは極めて低い遺伝的変異(n=0.0001)を保有することが示された。この発見は、供試した日本型イネの祖先集団サイズが小さいことを示している。日本型イネは、インド型イネと比較して、高い割合の非同義置換を固定していることが明らかになった。これは、日本型イネの集団の有効な大きさが小さいことが原因であると考えられる。DNA塩基配列および、EcoTILLING法による解析の結果、連鎖不平衡の程度は、野生種Orufipogonで約5kb、栽培種のインド型イネで、約50kbの領域にわたっていることが判明した。 2.イネ品種「ひとめぼれ」にEMSによる突然変異処理を実施して、約1万系統のM2世代を得た。これらの内、2700系統を圃場で展開し、形質調査を実施したところ、約700系統に変異形質が確認された。これらの系統からDNAを抽出して、ゲノム上の任意の領域1kbについて、TILLING法によってDNA変異を確認したところ、1000系統あたり平均5箇所の突然変異を検出することができた。十分量の突然変異率であるので、本突然変異系統を増殖し、DNAを保存して、今後のイネ逆遺伝学の実験材料として供試することとする。さらに、上記2700系統に対して、(1)いもち病菌レース007および003を接種し、抵抗性反応が変化した突然変異体、および(2)種子を15度の低温下で育成し、発芽性の向上した突然変異体を、現在スクリーン中である。また、別のイネ品種「ササニシキ」に対してもEMS突然変異処理を施し、現在M2世代を圃場にて展開中である。
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