KIAA蛋白質を含めた巨大な蛋白質は蛋白質複合体の中心的働きをすると考えられるため、KIAA蛋白質を欠損させれば、機能蛋白質複合体の機能全体に影響を与え、遺伝子欠損マウスで明らかな表現型を示すという仮説を提唱している。既に作製したKIAA遺伝子欠損マウスの中で明らかな表現型を示すKIAA遺伝子に焦点を絞り、実際に細胞内でこれらの巨大蛋白質を含む機能蛋白質複合体の同定し、巨大蛋白質を含む生体内のネットワークが存在することを示した。KIAA1447遺伝子欠損マウスは、大部分の仔マウスは生後すぐに死亡し、骨格の染色により骨格の成長不良が観察される一方、ごく稀にアダルトのステージまで成長できるKIAA1447-/-マウスが生じ、運動機能障害を示すことが明らかになっている。KIAA1447蛋白質は核に顆粒状に局在するが、この穎粒状の局在は核小体等の既知の核内構造体とは一致しないことから、KIAA1447蛋白質を中心とした新規な蛋白質複合体の存在が示唆された。このKIAA1447蛋白質を含む巨大蛋白質を含む複合体を生化学的な手法で明確にするために、KIAA1447蛋白質のC末端部分に精製用のTAPタグまたはEGFPを付加した後、テトラサイクリンの添加により発現誘導される安定発現細胞を作製した。安定発現株より調整した核抽出液をセファクリルS-300を用いたゲルろ過法を用いて、分子量の解析を行った。その結果、2000kDa以上の巨大な複合体として存在することが明らかになった。巨大複合体の構成蛋白質を同定することは今後の課題であるが、以上の結果からKIAA蛋白質を中心とした蛋白質複合体の存在を明確にすることができた。このような複合体の存在は、上記の仮説とよく一致している。
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