研究概要 |
がん抑制タンパク質p53の機能発現のためには四量体の形成が必須である。変異によるp53機能の不活性化機構の解明は、p53遺伝子のヒト悪性腫瘍に見られるミスセンス変異による細胞がん化を理解する上で極めて重要である。本研究では、四量体形成ドメイン変異によるp53機能の不活性化機構を解明し、四量体形成安定化を介した変異体タンパク質の機能修復活性をもつ薬剤開発を目指している。本年度は、以下の成果を得た。 (1) ゲルろ過によるp53TDペプチドの多量体構造の網羅的解析を行った結果、悪性腫瘍に見られる41種の変異において、四量体構造の不安定化がみられた。興味あることに、この不安定化の程度は非常に大きく、変異による不安定化の癌抑制機能における閾値が極めて小さいことが示唆された (2) Phage Libraryから得られた複数のp53四量体構造安定化配列から二種類の特徴的なより短い配列(HHR、RPS)を見いだし、Phage Libraryの特徴から単量体および二量体HHRペプチドを化学合成した。興味あることに、二量体HHRペプチドがK351N変異体に対して、安定化効果を持つことが明らかとなった。一方、L330H変異体には単量体HHRペプチドのみ相互作用および安定化を示した。 (3) 四量体構造界面に存在する6個のGlu残基をターゲットとする、変異型p53の四量体構造安定化させる新規化合物Calix[6]arene誘導体をデザインした。合成した化合物を変異型p53TDペプチドに加え、四量体構造の安定性変化をCDスペクトルにより解析した結果、ピラゾリルーcalix[6]arene,イミダゾリルーcalix[6]arene共に変異型ペプチドF328V, R337Hを安定化することが明らかとなった。
|