研究概要 |
本研究では,社会的な問題となっている病原性細菌である黄色ブドウ球菌由来のホスト細胞への接着に関与する蛋白質を対象とし,立体構造解析を通して,黄色ブドウ球菌のホスト細胞への接着機構を理解し,さらに創薬のための情報基盤を実用可能な規模へと拡張することを最終的な研究目標とする.具体的には,心内膜炎への関連性が指摘されている超巨大蛋白質,EbhAの立体構造を,X線結晶構造解析法および小角X線散乱法の2つ手法を用いて解析し,次いで各ドメインの結合因子を同定し,得られる情報からEbhAのホスト細胞への結合戦略,並びに疾患への関連性を理解することを目指す.この目的のために平成18年度は,結晶化に成功したEbhAのドメインのうち,2つのドメインの連結蛋白質(EbhA-7-8(7番目のドメインと8番目のドメインがつながったもの))について回折データを収集,構造解析を実施した.その結果,この2つのドメインは,どちらもアルファヘリックスバンドル構造からなり,それが連続的につながっている構造をとっていることを明らかにした.さらに,新たにEbhA5-7,7-8,5-8,6-9,5-10,11-13,10-13,フラグメントの調製を試み,このうち,EbhA5-7,7-8,5-8,6-9,11-13,10-13の発現に成功した.EbhA5-7,5-8,11-13,10-13については結晶として得られており,4つのドメインを連結させた蛋白質(EbhA-5-8,492残基,約60kDa)については回折も確認した.小角散乱実験では,EbhA5-8はEbhA-7-8様の繰り返し構造がさらにタンデムにつながったものであることを示唆している.
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