研究概要 |
Gタンパク質共役型受容体などの膜タンパク質や核内受容体などの転写因子は多数の相互作用タンパク質と複合体を形成して,生理的調節を担っていると考えられている。これらの細胞の刺激応答に重要なタンパク質は微量かつ精製が困難であることから,生体内での機能のダイナミクスの解析が困難である。本研究では,膜タンパク質を機能を保ったままバキュロウイルスに発現再構成して機能解析する手法を開発し(Sakihama T., J Biotechnol., 2008),またそれを利用して機能的な抗体を取得し(Saitoh R., et. al., JIM,2007),低ノイズビーズに抗体を固定化して質量分析計による解析を行うことにより,生体におけるタンパク質相互作用のダイナミズムを解析する手法を開発することが目的である。本年度は,アンギオテンシンII型受容体(AT2)および,AT2に相互作用するタンパク質(ATIP)について,バキュロウイルス免疫によりモノクローナル抗体の取得に成功し,これらの抗体を用いてアンギオテンシンが心血管系に重要な調節を行っていることを見出した(論文準備中)。膜タンパク質のRobo1,γセクレターゼについても作製した抗体により内在性タンパク質のMS解析に成功した。また,サイクリンA2のmRNA安定性に関わるWTAPや肝臓やすい臓形成に重要なHNF4αについて,高親和性抗体を用いた磁気ビーズによる親和性精製MS分析法を確立し,10cmディッシュ1枚から内在性HNF4αを同定できること,100種類を超える相互作用候補タンパク質を同定できることをKeystone Symposium, Cold Spring Harbor Symposium,日本分子生物学会等で発表した。内在性タンパク質の同定により,これまでの強制発現系とは異なる調節のダイナミクスが解析できることから,さまざまな疾患の病態や薬理作用に関わるタンパク質修飾,相互作用解析において強力なツールになると考えられる。
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