研究概要 |
本研究では,生体内分子の機能を機能しているその場で生きたまま調べる化学ツール(センサー分子)をデザイン・合成し,これまで調べることができなかった分子機能解明を行う. 申請者はこれまでに,生体内分子の機能を生きたまま可視化するため蛍光センサー分子を開発してきた.本申請ではさらに汎用性高い機能解明手法を開発するため,細胞内分子可視化にとどまらない新技術,さらには個体そのままの可視化解析を可能とする化学センサー分子を開発する. 本研究項目では蛋白質相互作用による機能発現の瞬間を一時静止画像のように捉えることを目標とする.このために,デザインした機能性センサー分子を加えることで蛋白質と蛋白質の相互作用を共有結合化して固定する.この場合の鍵となる反応は水中,生理的pH,室温あるいは37℃の条件において混ぜただけで分子集合体を形成する必要がある.この条件をみたすためには,遷移状態の安定化あるいは反応によるエルギー効率収支が水中において有利に働く必然性がある.この反応では,遷移状態が反応前より小さい分子集合反応であること,発熱反応であることが求められる.これまで報告された応用例のうち,この条件をクリアーする反応にはHuisgen型1,3環化付加反応が挙げられる.しかし,この反応は触媒としてCu^+が必要であること,そして2分子の反応であり,3分子以上の分子集合体を生理条件で生成させることができないという問題点があり,蛋白質相互作用の解析ツールとして用いることはできない.上記の条件をみたす反応を調べたところ1924年に報告されたPasserini反応が適当であることを見つけた.本研究項目ではこのPasserini反応を用いて蛋白質修飾を行うことを目的とした.この結果,水溶液中でモデル分子が集合化反応を起こすことを確認し,最適化モデル反応を行った.
|